
早期スポーツ専門化とは?
「一流になるには1万時間(10年間)必要」は間違い!?
1万時間の法則とは、あるスポーツまたは活動で一流レベルに達するには、1万時間の練習が必要であるという考えです。これは、同じスポーツを毎日3時間10年間行うことになります。こんなに練習すれば、一流に慣れそうですね。しかし、これを支持するデータは乏しく、逆に支持しないデータが報告されています。
現在、日本に限らず世界中でスポーツのレベルは日々進化しています。それと相まって、選手自身が「もっと上手く・強くなって、プロ選手になりたい」、もしくは、保護者が自分の子どもにそのようになってほしいという欲求も向上しています。そのような欲求から、幼い年齢からプレーするスポーツを一つに絞るという“早期スポーツ専門化”にという考えが進んでいます。これは、1万時間の法則のように、できるだけ早いうちから、たくさん練習すれば、一流の選手になるだろうという考えがあるからではないかと言われています。
しかし、この “早期スポーツ専門化”にはいくつかの問題があります。
早期スポーツ専門化のエビデンス(科学的根拠)
“一つのスポーツに特化した選手は、複数のスポーツをする選手と比較して、ケガをする可能性が4倍高い”
(Hall R, et al. 2015)
“11~15歳で3種目以上のスポーツを経験した青少年は、16~18歳で全国レベルでプレーする可能性が高い”
(Bridge MW, et al. 2013)
“タイムを競う陸上や水泳などのスポーツにおいて、幼少期に専門的な練習(そのスポーツに特化した練習)をやりすぎないことが、将来、より高いパフォーマンスを発揮する重要な要素になる”
(Moesch K, et al. 2011)
上記のような研究から分かるように、早期スポーツ専門化は、スポーツにおけるケガとパフォーマンスに良くない影響を与えると考えられます。
早期スポーツ専門化は、同じような動作を続けるため、身体の同じ部位に反復的なストレスがかかることによって、ケガが発生しやすいと言われています。例えば投球動作の繰り返しによる野球肘や野球肩、サッカーのキック動作やバレーのアタックの繰り返しによる腰椎分離症などが起こりえます。
子どもの時に単一のスポーツで繰り返しの動作を経験するよりも、他の競技を通して、多種多様な動きを経験することが重要です。多種多様な動きを経験することは、スポーツする上で土台となる基礎運動能力の発達につながり、将来の専門的なスポーツスキルの向上とプレーできるスポーツの幅が広がることにつながります。
つまり、早期スポーツ専門化は、エリートアスリートになるための必須要素ではなく、優れた運動能力の発達につながるわけではないということです。
さらに、早期スポーツ専門化がバーンアウト(燃え尽き症候群)につながることも述べています。バーンアウトとは、“アスリートの競技に対する心理学的および生理学的要求に対する身体的および感情的な疲労”と定義されています(Kutz M, et al. 2009)。バーンアウトは、アスリートにとって楽しみであったスポーツを辞める原因になるかもしれない深刻な問題です。

子どもたちに、様々なスポーツをプレーする機会を
早期スポーツ専門化は長期的にみると、必ずしも競技成績の向上にはつながるとは言えず、ケガする可能性が高まることや、最悪の場合はスポーツを辞めてしまうことにつながると言えます。
子どもたちが、小さい頃からのスポーツ専門化にこだわらず、様々なスポーツを経験させてあげることが、将来、自分の得意・好きなスポーツを選択することができ、競技成績の向上や、ケガやバーンアウトによるスポーツからの引退を防ぐことにつながるのではないかと思います。また、そのような環境づくりをしていくことが私たち大人の役割ではないでしょうか。
*NSCAが出している下記の二つのレビューを参考にし、早期スポーツ専門化の問題を紹介しました。
長期的な運動能力の開発に関するNSCA(National Strength and Conditioning Association)のポジションステイトメント(Rhodri S, et al, NSCA, 2017)
青少年における早期スポーツ専門化と多様化(Thomas C, NSCA COACH, 2019)
*NSCAは、スポーツパフォーマンスと体力の向上を目的とした、適切なストレングストレーニング(筋力トレーニングなど)とコンディショニング(より優れたパフォーマンスをするために必要なすべての準備)の活用という共通のゴールを目指して活動している団体です。世界76の国と地域において、NSCAの会員が主にアスリートを指導対象とするストレングスコーチや、一般人も指導対象とするパーソナルトレーナーとして活躍しています。私は昨夏にアメリカにあるNSCA本部を訪問しました。その際に、アメリカのオリンピックセンターのストレングスコーチはNSCA認定資格保持者であるという話も聞きました。
OneSelF フィジカルアカデミー 秋山

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